talulah gosh's blog

リハビリがてらの備忘録(昔のブログは http://d.hatena.ne.jp/theklf/ )

2022/05/03(火)憲法記念日

今日は本来は地元のお祭りの日だけど、コロナ対策でおみこしが出ないからとても静か。いいお天気。

ゴールデンカムイ』を読み終わった。空き時間に少しずつ読んでいたので読み終わるまでにかなり時間がかかってしまった……。
樺太行きのパートは若干中だるみ感があるかと思ったけど、ラストに向かうにつれて描かれる場面の状況が展開の加速度を相乗効果的に上げていく感じでとにかくすごかった。『スラムダンク』のコミックス最終巻を読んだ時の印象と少し似ていた気がする。
作者の野田サトルさんは本当に絵がうまいんだな、と思う。静物画としても精巧な形が取れるからこそ、動物や自然に嘘がない。もちろんマンガ的な省略はあるだろうけど、人の目で見た時に違和感が感じられないので感心してしまう。見開きの自然の描写が頻繁にあることに気づいてからは横位置で読むようにしたけど、奥行きや広がりも伝わってきてすごく美しい。A4のiPadでもきれいに読めたし。そういう部分をきちんと描ける人だからこそ、安野モヨコ羽海野チカ荒木飛呂彦のようなタッチ、「MAD MAX」や西部劇など映画からのオマージュもうまくなじんでユーモアとして昇華されるんだろうな。ストーリーのほうも、展開はもちろんアイヌ文化などの民俗学や歴史文化、国際政治、エンタメ、ものすごくいろんなジャンルを絡めた情報量。そこにさらに絵にまでてんこ盛りに情報量があるから読む上でとにかく体力を使う(いい意味でもしんどい意味でも)。
このマンガでは、アイヌ文化と戦争が同じくらいの強さで扱われている。青年誌は戦いをあそこまで仔細に描写できる許容量があるのかとびっくりしてしまった。残虐な表現はもちろん戦いの場面で人が簡単に飛び散る描写が続くとやっぱりしんどいし、刺激も相当に強い。(必要な場面ではあるけど)動物を解体する描写も含めて苦手な人は苦手な作品だと思う。
ただ、動物の解体は私たちが日常食べている肉や魚はそこに必ずあるものだし、生きていく上では必要だと考えると、そういう作業があることは実感して認識しておくことは大切なことだと思う。また、戦いの場面については、作品は架空とはいえ実際の戦争ではそうした行動が行われていたわけで、歴史として目を逸らしてはいけない表現だとも言える。とはいえ、必ずしも強烈なビジュアルが目に入るメディアで知る必要はないので、それぞれが自分に適したメディアを選べばいいと思う。というそもそもが重いストーリーや背景が前提なので、白石のようなおどけ者キャラがいてくれたのは個人的に助かった。冒険活劇(というにはちょっとヘビーだが)には道化者のキャラクターが必要不可欠であると実感した。
改めて感じたのは、作者は描くものへの敬意があるということ。単なるエンタメとしてだけ消費していい作品ではない気がしたし、読み終わってからいろいろ考えさせられた。これをちゃんと描こうとすれば今の日本映画で表せない描写ばかりになるだろうし、もはやNetflixくらいでしか実現できないのではないだろうか。生半可な感じでは実写化しないほうがいいのではとにわか読者の私ですら思ってしまうほどだから、すでに出ている実写化に対するファンの人々の心配や不安はいかほどか。
今までアイヌのことは地名や着物くらいしか印象がなかったけど、食べるものを感謝して少しだけ残して戻す、また戻ってきてもらうために盛大に送る、といった生物や自然への信仰に興味がわいたので、オススメしてもらった『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』を買ってきた。これから読む予定。楽しみだな。

しかし「知らないことが差別を生む」ってセリフは重かったな……。