talulah gosh's blog

リハビリがてらの備忘録(昔のブログは http://d.hatena.ne.jp/theklf/ )

1月25日(水)五の席ー話芸のつどい・其の二@紀尾井ホール小ホール

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「五の席-話芸のつどい 其の二」を見てきた。サブタイトル通り、落語(上方、江戸)と浪曲、漫才やコントと4つの話芸を集めたライブで、出演者は落語の桂三度さんと桂宮治さん、浪曲の玉川太福さん、漫才のヤーレンズ、コントのルシファー吉岡さん。

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写真:(左→右)ヤーレンズ、玉川さん、三度さん/ルシファーさん、宮治さん。

なんとなくライブと言いたくなるのは、落語や浪曲などの演芸の催しと言えば浅草(か新宿の末廣亭に出そうな)の芸人さんが出るイメージがある漫才やコント(漫談)の枠にヤーレンズやルシファーさんが選ばれているからだろうか。漫才コーナーに「えっこの世代が?」という芸人さんが出るようになった最近の「笑点」にも近い感覚というか。

トップはヤーレンズ「侍の決闘」。普段からすると珍しい長尺だけに、定番の「豆腐」や「馬油」から最近よく聞く「ロシア革命」までベスト盤のような幅広いセットリストだった。そういえば、ライブで必ず盛り上がる初期曲に最近の推し曲を混ぜる構成やライブごとに毎回少しずつ違いがあるところ、ヤーレンズはCDとライブが違う(あと時間が押しがちな)ライブバンドのようだなとこの日の漫才を見て改めて思った。ちなみにネタが年末のトークライブで見た「侍の決闘」のものすごい凝縮版だったので、その後三度さんの枕を聞いた時に偶然の繋がりを感じて思わず笑ってしまった。
2番手は浪曲師の玉川太福さん。私も含め浪曲初心者が多いという認識で披露された作品だからだろうけど、純粋にとても面白かった。30秒かけて「利根川の」しか伝えられない情報量が少ない話芸という導入や「ことばの出ない間や歌の抑揚などから情景や面白さを想像してほしい」との説明を受けて聞く、光景の説明に特化した「銭湯」や「地べたの二人〜おかず交換」は、まさに例としてぴったり。25分全体を通して見ると初心者にもなんとなく概要がわかり、ちゃんと楽しめる形になっていたので感心してしまった。また三味線は都をどりくらいでしか見たことがなかっただけに、曲師玉川みね子さんの三味線の演奏を生で聞くことができたのも貴重だった。実際の浪曲はもう少し理解力や自分から入り込む努力が必要そうだけど、新しい面白さがあると知ることができただけでも価値があると思う。

桂三度さんは、「この話を凝縮すると…」シリーズを枕にした創作落語「先生ちゃうねん」。たとえを駆使した高校の先生と生徒のやり取りが、今もどこかで行われていそうだけど多分ないでもすごくわかる、というコメディになっていて大笑いしてしまった。三度さんの落語は、言葉のやり取りの面白さはもちろん、その言葉がはっきりと映像になって見える感じがした。落語は基本的にそういう芸ではあるけど、他に比べてもコントや演劇寄りでそのまま脚本にもなりそうに思えたのは、山下・渡辺からジャリズム時代のコントや世界のナベアツ名義でのピン芸を経ての今、だからなのかもしれない。
「コントは話芸なのか」と初出演なのにかなりツッコミを入れられていたルシファーさん。テレビでSMのネタを出す彼がどんなネタを披露するかとても興味があったのだけど、見終わっての感想は「面白かった」と「どんなパッケージでもルシファー色はきちんと残る」だった。「隣に住む大学生の日々の大騒ぎに文句を言いに行く主人公」という冒頭の場面からは、相変わらず想像がつかない展開。壁の向こうで繰り広げられる隣人の4カ月間の恋模様を聞き、妄想を勝手に繰り広げるだけなのに「でも、アリかな」と思わされる説得力があるから本当にすごい。ポップな変態感をギリギリ残しつつ、「隣人を愛せ」というタイトル含め文学的な要素もそこはかとなく感じられて素晴らしかった。
トリは江戸落語桂宮治さん。OPでの話しぶりがかなり勢いのある方で実際の演目はどんな雰囲気になるのかなと思ったが、さすが二つ目、桂の紋が入った羽織を脱いで本編に入ると一気に落語を聞かせる落ち着いた空気感に変え、江戸時代の庶民の話に違和感なく引き寄せてしまわれたのでとても驚いた。演目は、ある商店の芝居(当時の歌舞伎)好き若旦那の話を描いた「七段目」。大河も歴史好きでもない私でも楽しめたから、鍵になる忠臣蔵の「七段目」や当時の歌舞伎の知識があれば恐らくより面白いのだろうと思う。宮治さんは漫談と古典落語が融合したような形で、「落語ファンからは古典からは凡そ遠いことをやると言われる」というお話もなんとなく頷ける。逆にその直球の古典ではない雰囲気が、見慣れない人の見やすさに一役買っている気もした。

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写真:終了後に演目を張り出してくれていた(うれしい)。

伝統的な演芸と漫才・コントは近いようで遠い場所にあるだけに、それらを近づけるこうしたライブの貴重さを改めて感じる。エンディングでは「あまり人が入らなくて次回はないかもしれない」と冗談交じりに出演者の方たちが話していたけど、意義のある取り組みだし、小規模でいいから地道に続けていただけたらなと思った。

#ライブメモ #ヤーレンズ #玉川太福 #桂三度 #ルシファー吉岡 #桂宮治